第一章
 
三、虚実の掌握

  上で述べたように、太極拳は虚実をきっちり分けることと重心の偏りによって生じた偏心力をトルクとして動力の源とする。これは最も省エネな機械的作用であり、長時間動いてもあまり疲れない。練習の時には少し重心を移動させるだけで動作が可能である。このような虚実の鍛錬の手順には、まずは両足の虚実、次に両手の虚実、最後に最も重要な一手一足上下の虚実がある。

  型を一通り行う場合、両手が弧と圏を描くために虚と実を絶えず変換させ、それによって両足の虚実と両手の虚実がともなうよう調整する。同様に、両足を前進または後退させるときにはかならず虚の足で踏み出し、接地するポイントで落として実にさせる。これは太極拳における一般的な踏み出すときの要求であるが、手はこれに合わせて虚実を変換させる。これらは全て上が下に従う、または下が上に従うという上下相随の要求であり、太極拳の練習時には必ずこれを守り習慣としなければならない。長い間この練習を続け習慣と成ってしまえば、敵に攻められたときには自動的に“連”が可能となり、動くときにはまた自然に“随”が生成され、大きな意志力を動員して動作をコントロールする必要がなくなる。
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